宇宙消失

SF小説


1つ目の核は、脳をナノテクノロジーでいじくりまわして、
感情とか、いろいろ操作できるようになったという世界観。
ベクターの概念を知っていないと後半は理解できない。
この技術を「モッド」と作品中では呼ぶのだが、
2100年頃にはそういう世界がやって来るのではないか、
とわくわくしながら読んだ。


2つ目の核は量子力学
主人公はシュレディンガーの猫だ。
波動方程式とか、多元的世界とか、
そういう知識があると楽しく読める。
観測者の有無が現実を左右する世界で、
冒頭の宇宙を覆う<バブル>の謎も、
そこに解決される。
世界はマイクロ秒ごとに、あらゆる可能性に拡散して、
「モッド」によって、望む固有状態が選択できるようになったら・・・
という物語だ。
この核は、何もSFの話だ、と一笑に付することができない、
と思ってしまう。
強く望めば夢はかなう、という言説の論理的根拠が、
実はこのような不確定性に根差したものだと思うからだ。
必然的にこの物語は、
エロゲーに見られる、分岐した未来を描く路線に片足を入れている。
選択されなかった過去とか、行き止まりを進むことへの葛藤
なんかも描写される。



いや、なんかこれあり得ると思うんですよね。
アイディアがすごくいいですよね。


面白い。

宇宙消失 (創元SF文庫) [文庫]
グレッグ イーガン (著), Greg Egan (原著), 山岸 真 (翻訳)